「親の様子が少し気になる。でも、こんなことで電話していいのだろうか」。そう迷って、電話の前で手が止まっていませんか。
結論から書きます。地域包括支援センターは、市町村が設けている高齢者の総合相談の窓口です。厚生労働省の資料では、高齢者本人だけでなく、家族介護者の相談にも初期の段階から応じる役割が示されています。介護保険の申請前でも、まだ「介護」と呼ぶほどではない段階でも、相談の入口として使えます。
この記事では、相談できることの範囲と、電話の前に家族がやることをまとめました。最初に話すことの例、聞かれやすいことのメモ、親の住む地域の窓口の探し方も紹介します。離れて暮らしている方にも使える内容です。
地域包括支援センターとは|家族からの相談も受ける公的な窓口

地域包括支援センターは、介護保険法第115条の46第1項に定められた施設です。設置するのは市町村で、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などが配置されています。
厚生労働省によると、センターはすべての市町村に置かれています。数は全国で5,487か所、支所(ブランチ・サブセンター)を含めると7,374か所です(令和7年4月末現在)。運営は市町村の直営が約2割、委託が約8割とされています。
4つの役割を家族の目線で読みかえる
厚生労働省の資料では、センターの主な仕事は次の4つに整理されています。家族にとってどう役に立つかを、右側に添えました。
- 総合相談支援:高齢者や家族介護者の相談に、初期の段階から継続して応じ、地域のサービスなどにつなぐ。→「何から始めればいいか分からない」をそのまま話せる
- 権利擁護:成年後見制度の活用の促進や、高齢者虐待への対応など。→お金の管理や、親がだまされないかという心配も相談の対象になりうる
- 包括的・継続的ケアマネジメント支援:地域のケアマネジャーを支える。→ケアマネジャーとの関係に悩んだときの相談先にもなる
- 介護予防ケアマネジメント:要支援の人などが、介護予防や生活の支援を受けられるよう手伝う。→「要支援」の認定を受けた後の窓口になることが多い
相談が多い内容の例
自治体の案内を見ると、相談の内容はとても幅広く書かれています。たとえば岡山市は、介護・介護予防、健康づくり、認知症、財産管理、高齢者の福祉・医療、虐待防止、消費者被害防止を挙げています。
家族からは、次のような相談がよく寄せられる形です。
- 最近、物忘れが増えた気がする。どこに相談し、どう受診につなげればいいか
- 買い物や料理がつらそう。使えるサービスはあるか
- 要介護認定を申請したほうがいいのか、手続きの流れを知りたい
- 退院が決まったが、家での生活に戻れるか不安
- 一人暮らしで、離れて暮らす自分には様子が分からない
- 仕事を続けながら、親のサポートをどう回せばいいか
どれも「決めてから行く」必要はありません。状況の整理から一緒にしてもらえるのが、この窓口のよさです。
費用については、岡山市のように「相談料は無料です」と公式サイトで明記している自治体があります。気になる場合は、電話の最初に確認しておくと安心です。なお、センターの名前は自治体によって愛称がついていることもあります。
相談する前に家族がまずやること(チェックリスト)

準備が整っていなくても相談はできます。それでも、次のことが分かっていると話が早く進みます。おやまもの手続きナビ「心配になってきた」と同じ順番で並べました。
- □ 親の住所(番地まで)を確かめる。担当のセンターは親の住所で決まります
- □ 親の住む市区町村の、担当センターの名前と電話番号を調べる
- □ 親の「困りごと」を書き出す(歩く・食べる・買い物・薬・お金・物忘れ・気分の7つで、気になることを1行ずつ)
- □ いつごろから変わってきたかをメモする(「春ごろから」くらいで十分です)
- □ かかりつけ医の病院名と、飲んでいる薬を把握する(お薬手帳の写真があると便利です)
- □ 同居か一人暮らしか、近くに頼れる人がいるかを整理する
- □ 介護保険の認定を受けているか(受けていれば、要支援・要介護のどれか)を確かめる
- □ 親本人が相談のことを知っているか、どう感じているかを考えておく
- □ 自分が平日の日中に電話を受けられる時間帯を決めておく
全部そろわなくても大丈夫です。分からない項目は「分からない」と伝えれば、確かめ方を教えてもらえます。
担当は「親の住所」で決まる
センターには、それぞれ担当する区域があります。岡山市では中学校区ごとに担当が分かれていると案内されています。区域の分け方は自治体ごとに違います。
ポイントは、相談する人ではなく、親が住んでいる場所で担当が決まることです。東京に住む子どもが、地方で一人暮らしをする親のことを相談するなら、連絡先は親の住む市区町村のセンターです。自分の家の近くのセンターではありません。
どこが担当か分からないときは、親の住む市区町村の高齢者福祉や介護保険の担当課に住所を伝えれば、担当のセンターを教えてもらえます。
電話で最初に話すことの例と「聞かれることメモ」

いちばん迷うのが、電話の最初のひと言です。うまく話そうとしなくて大丈夫です。次の型をそのまま読み上げてもかまいません。
最初のひと言の例
- 「〇〇市〇〇町に住む父(母)のことで相談したくて、お電話しました。〇〇で困っていて、何から始めればいいか教えてほしいです」
- 「私は離れて住んでいる子どもです。母が〇〇町で一人暮らしをしています。最近〇〇が気になっていて、こちらの担当になるか確かめたくてお電話しました」
- 「まだ介護というほどではないのですが、先のことが心配で、今のうちに知っておけることを伺いたいです」
「〇〇で困っていて」の部分には、チェックリストで書き出した困りごとを1つか2つ入れます。全部を話しきる必要はありません。
聞かれることメモ
電話では、次のようなことを聞かれやすいです。手元にメモを置いておくと落ち着いて答えられます。
- 親の名前・年齢・住所
- 電話をかけている人と親との関係、自分の連絡先
- 困っていること、いつごろからか
- 同居か一人暮らしか、日中にそばにいる人
- かかりつけ医と、通院している病院
- 介護保険の認定を受けているか
- 親本人は相談のことを知っているか
- 折り返しの電話を受けやすい時間帯
電話の最後に確かめておくこと
- 対応してくれた人の名前
- 次に何をするか(訪問・来所・書類など)と、その日程のめやす
- 次に連絡するとき、誰あてにかければいいか
相談の内容によっては、職員が親の家を訪ねて話を聞いてくれる場合もあります。訪問を受けるかどうかは、親の気持ちも聞きながら相談して決められます。
よくあるつまずきと対処
親が「相談なんていらない」と言う
親にとっては、自分のことを外の人に知られるのが不安なこともあります。まずは家族だけで相談できます。センターの人に「本人が乗り気でないときの声のかけ方」を聞くのも一つの方法です。
平日の日中に電話ができない
岡山市の場合、相談の受付は平日の午前8時30分から午後5時まで(祝日・年末年始を除く)です。受付時間はセンターごとに違います。昼休みに短く電話をして、折り返しの時間を決めてもらう方法もあります。
どこまで頼めるのか分からない
センターは相談を受け、必要な制度やサービスにつなぐ窓口です。病気の診断や治療をする場所ではありません。医療のことは、かかりつけ医などに相談を続けます。
要介護の認定を受けた後は、日々のサービスの計画づくりはケアマネジャーが担うのが一般的です。その場合も、困ったときの相談先としてセンターを使えます。
お金の管理が心配なときは、権利擁護の役割として成年後見制度などの案内を受けられます。制度を使うかどうかの判断は、センターや専門家と話しながら決めていくものです。
一度相談したきりになってしまった
「様子を見ましょう」で終わっても、それは失敗ではありません。状況が変わったら、同じセンターにもう一度電話すれば続きから相談できます。前回の日付と担当者の名前を伝えると、話が早く進みます。
相談の内容を記録しておくと役立つこと
相談は一度で終わらないことが多いです。記録を残しておくと、次の相談や家族への共有がぐっと楽になります。
- 相談した日と、対応してくれた人の名前
- 伝えた困りごとと、受けた説明のポイント(3行ほどで十分です)
- 次にやること・誰がやるか・いつまでか
- 紹介された制度やサービスの名前
- センターの電話番号と受付時間
きょうだいや配偶者がいる場合は、この記録を共有しておくと「聞いていない」「また同じことを聞かれた」というすれ違いを減らせます。役割を決めるより前に、まず情報をそろえておくことが話し合いの土台になります。
おやまもでは、相談の内容を「できごと」として記録し、家族と共有できます。センターの電話番号は、親のプロフィールに保存しておけます。
親の住む地域の窓口を調べる
担当のセンターは、親の住む市区町村のホームページに一覧が載っていることが多いです。厚生労働省のページにも「全国の地域包括支援センターの一覧」として、各都道府県のホームページへのリンクがまとめられています。
おやまもの地域ページでは、市ごとに相談の窓口をまとめています。まずは都道府県のページから、親の住む市を探してみてください。
市のページの例として、岡山市のページがあります。載っていない市区町村の場合は、次の順で探すと見つけやすいです。
- 検索で「(親の住む市区町村名) 地域包括支援センター」と入れる
- 市区町村の公式サイトで、担当区域(町名や校区)の表を見る
- 分からなければ、市区町村の介護保険の担当課に親の住所を伝えて聞く
ほかの公的な相談先
- 市区町村の介護保険の担当課:要介護認定の申請や、介護保険の手続きの窓口です
- 入院中なら病院の相談窓口:MSW(医療ソーシャルワーカー)や地域連携室が、退院後の生活の相談に応じます
- 仕事との両立:勤務先の人事のほか、都道府県労働局が介護休業・介護休暇などの相談を受けています。厚生労働省の資料でも、センターの連携先に都道府県労働局が挙げられています
よくある質問
親本人が一緒でなくても、家族だけで相談できますか?
はい、相談できます。厚生労働省の資料では、総合相談支援の対象として「地域の高齢者や家族介護者」が挙げられています。親の状況をできる範囲で伝えれば、次にできることを一緒に考えてもらえます。
遠くに住んでいても、親の地域のセンターに相談できますか?
相談できます。担当は親の住所で決まるため、連絡先は親の住む市区町村のセンターです。電話で「離れて住む子どもです」と最初に伝えると、話が伝わりやすくなります。
まだ介護が必要な状態ではありません。相談してもいいですか?
相談できます。センターの役割には介護予防も含まれており、初期の段階からの相談に応じることが示されています。「少し気になる」という段階こそ、使える制度や地域の集まりを知るよい機会です。
相談にお金はかかりますか?
岡山市のように「相談料は無料です」と明記している自治体があります。センターの紹介で使うサービスには、それぞれ費用がかかる場合があります。詳しくは、お住まいの市区町村やセンターに確認してください。
相談したら、すぐに介護サービスを使うことになりますか?
いいえ、相談したからといって、サービスを使うと決まるわけではありません。話を聞いたうえで、様子を見る・認定を申請する・地域の集まりに参加するなど、家族と親で選んでいけます。
まとめ
- 地域包括支援センターは、市町村が設けている高齢者の総合相談の窓口で、家族からの相談にも応じる
- 介護保険の申請前でも、「少し気になる」段階でも相談できる
- 担当は親の住所で決まる。離れて住む子どもは、親の住む市区町村のセンターへ
- 電話の前に、親の住所・困りごと・かかりつけ医・同居の有無をメモしておくと話が早い
- 相談した日・担当者・次にやることを記録し、家族と共有しておく
電話のひと言目は「〇〇で困っていて、何から始めればいいか相談したいです」で十分です。一人で抱えこまず、まずは親の住む地域の窓口に声をかけてみてください。
出典・確認日
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」(2.地域包括支援センターについて)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/index.html(確認日:2026-09-29) - 厚生労働省「地域包括支援センターについて」(地域包括支援センターの概要・PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001671185.pdf(確認日:2026-09-29) - 岡山市「地域包括支援センターについて(高齢者の困りごと相談、高齢者の異変に気付いたら)」
https://www.city.okayama.jp/kurashi/0000004155.html(確認日:2026-09-29)
この記事は、親のサポートに関する一般的な情報をお伝えするものです。医療・介護の判断や、税金・制度の個別の判断を行うものではありません。制度の内容や金額は、お住まいの市区町村や所得などによって異なり、変更されることがあります。具体的なことは、市区町村の窓口・地域包括支援センター・ケアマネジャー・医師・税務署などにご確認ください。




コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 地域包括支援センター相談|家族が最初に話すことと準備 […]